匿名建築デザインコンペで168のプロジェクトから選ばれた藤本氏設計の《ハンガリー音楽の家》。ヴァーロシュリゲト(市民公園)内に金色に浮かび上がるこの会館は、完成前から国際的に高い評価を受け、注目を集めています。 https://mag.tecture.jp/culture/20211027-43102/2022年1月末のオープニングに先立ち、リスト音楽院時代の恩師でもある、館長バッタ・アンドラーシュ氏に最終的な内装工事に入った館内を案内して頂きながら、お話を伺いました。「野外ステージを横目に入口を入ると広々としたエントランスホールになっています。螺旋階段を上がった中2階にはカフェ。エントランスホール、Shop、カフェへの入場は無料ですので、市民公園に張り出したカフェのテラスで一息つきながら、この藤本さんが設計して下さった素晴らしい建物を楽しめます。 さて、会館には大きな3つの音楽的要素が各階ごとに盛り込まれていますが、一階は生の音楽と触れ合う場です。大小2つのホールがあり、クラシック音楽だけではなく、色々なジャンルのコンサートに対応できる設計になっています。そしてご覧の通り市民公園の自然が見渡せるガラス張りのホールです。音響が心配されましたが、日本の永田音響設計さんがその懸念を解決してくれました。ピアノもヤマハを2台選びましたよ。 そして地下は時間を超えた音の体験の場。常設展示と仮設展示、サウンドドームがあります。常設展示はヨーロッパとハンガリー音楽の歴史をイヤフォンとバーチャルで旅するテーマパークになっていて、家族連れや若者も楽しめます。ハンガリー人の一生の歩みに寄り添う民族音楽 〜子守唄、クリスマスや復活祭の歌、結婚式、誕生日、嘆きの歌などなど〜、民族ダンス、そして単旋律から発展していく教会音楽などに、時の迷路を散歩しながら触れていきます。 サウンドドームは1970年の大阪万博で活躍したEötvös Péter氏の案。作曲家そして指揮者のEätvös氏は、大阪万博の西ドイツ館にあったサウンドドームに、シュトックハウゼンのアシスタントとして参加していました。音楽の家のサウンドドームでは、特殊カメラで撮影した映像を360度のスクリーンを見ながら、例えば森やどうくつ、教会ドームの真ん中に立っている様なあらゆる角度から降り注ぐ音や音楽を体験できます。 そして最上階はハンガリーが力を入れている音楽教育の場です。デジタルライブラリーがあり、ライトウェルと呼ばれる屋根の窓から差し込む自然光の中で、子供達と大学生達が触れ合いながら音楽を学びます。藤本さんはデザインの際、リスト音楽院などハンガリーの古い建築物を見学してインスピレーションを得たと仰っていますが、この音楽の家の金色に輝く天井に散られられた葉っぱのモチーフや、音のウェイブのイメージから、今度は子供や学生たちが多くのインスピレーションを受けることでしょう。 コダーイの「音楽はすべての人のもの」と言う言葉通り、ここではジャンルを問わず誰でも音楽を身近に楽しむことができ、ハンガリーでは例のない文化施設です。 市民公園はLiget Budapest プロジェクトとして、近年音楽の家をはじめ新民族博物館など、更に充実した博物館地区となっています。友好協会の皆様と新しいブダペストのランドマーク《ハンガリー音楽の家》でお目にかかれるのを楽しみにしています。」 音楽の家ホームページ |