女性科学研究者の環境改善に関する懇談会 Japan Association for the Improvement of Conditions of Women Scientists

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2018年度の企画につきまして

今回、日本学術会議24期において、会員の33%が女性、また連携会員の28.8%が女性という状況を心よりうれしく思いますとともに、学術会議の皆さまおよびJAICOWS会員の皆さま方に、それぞれの場でぜひ女性やマイノリティの状況改善のために尽力していただきたい、また学術会議の発展をリードしていっていただきたいと存じます。

JAICOWSとしてもできるだけ学術会議で急速に増加した女性会員、女性連携会員の皆さま方と積極的に交流の場を設けつつ、要望や悩みを聴き、要望に即した活動を行って行きたいと思っております。ぜひ多くの方にJAICOWSを知っていただき、入っていただき、ともに学術会議、学協会、会員や連携会員の環境を改善すべく活動して行きたいと思っております。これからも皆様のご要望を一つ一つ実現する努力を継続していきたく、どうぞよろしくお願いいたします。

昨年、学術会議の社会学委員会のジェンダー分科会では「学術の再生産が危ない!」という企画が海妻先生を中心に企画されました。法学委員会でもジェンダーの重要会合が開かれております。JAICOWSと致しましても、会員や学術会議会員・連携会員の環境改善に加え、日本のジェンダー格差を下方に抑えている重要な問題として、1万人のポスドクに職がないという状況をふまえた院生・ポスト院生の研究環境の改善や、女性が極めて多い非常勤講師、とりわけ近年導入された労働契約法の改正と英語のセンター入試の変化に伴う、非常勤講師の職の不安定化と大量解雇の危険性という問題と環境改善にも、積極的に取り組んでいきたいと思っております。

今回、JAICOWS会員の皆さまにはインターネットで、学術会議会員と連携会員の皆さまには紙ベースとインターネットの双方から、非常勤の方のアンケートを実施いたします。お忙しい時期とは存じますが、ご協力をぜひどうぞよろしくお願いいたします。

また皆さまのご要望を集めたいと存じております。

皆様から、改善してほしい、取り上げてほしい要望があれば、是非出していただきたく、どうぞよろしくお願いいたします。可能な限り改善すべく努力してまいりたいと存じます。JAICOWSの先達の方々は、学術会議に女子トイレもないところから一つ一つ身近な問題を含め改善を重ねてきました。皆様のご要望が活動のエネルギーになります。ぜひ小さなことでもご要望をお寄せいただけましたら幸いです。

封書では下記のワールドプランニングWPのJAICOWS宛、メイルでは役員のどなたにでもご意見をいただければと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。ご協力ありがとうございます。

新しく日本学術会議の女性会員、女性連携会員になられた方々にも、ぜひJAICOWSにご参加いただき、ご一緒に女性研究者の環境改善のために活動していきたいと考えております。何より、困ったこと改善してほしいことなどおありでしたら、お知らせください。

皆様にとって素晴らしいまた幸せな2018年となりますよう、心よりお祈りいたします。

羽場久美子

今後の活動に関するJAICOWS会長からの提案

今後の活動に関するJAICOWS会長からの提案

女性科学研究者の改善に向けて、特に若手研究者、非常勤研究者の地位の改善に向けて、今回2つのご提案・ご連絡をさせていただきたいと存じます。

1<「学術の再生産」が危ない!>シンポジウム、2017年9月18日(月:敬老の日)

青山学院大学総研ビル12階、大会議室 13:00-16:30

一つ目は、女性研究者の非正規化の現状と、その非正規化の問題点を問うシンポジウムのご案内です。今、研究者、学芸員、司書、非常勤講師など、学術関連専門職の非正規化が進んでいます。こうした専門職の方々の待遇改善なしに、『学術の再生産』は可能なのか?!それを問うシンポジウムが、学術会議の社会学委員会ジェンダー分科会の主催で開かれ、JAICOWSも協力参加させていただきます。

プログラムは以下の通りです。(ポスター参照)

13:00~13:10  海妻径子(岩手大学):趣旨説明

13:10~15:00 報告

河野銀子(山形大学/日本学術会議社会学委員会ジェンダー分科会会員):

女性研究者はどこにいるのかージェンダー統計の現状と限界を探る

廣森直子(青森県立保健大学):非正規化のすすむ図書館職場で専門性は保てるか

ー専門職の非正規化が女性によって受け入れられている現状を考える

清末愛砂(室蘭工業大学):

「女性研究者支援」事業は誰のためにあるのかー研究者の消費と搾取構造を考える

羽場久美子(青山学院大学/日本学術会議会員、JAICOWS(女性科学研究者の環境改善に関する懇談会)会長:女性研究者の貧困をどう解決するか?

15:15~16:30 質疑応答・討論

現在、シングルマザーや子供の貧困が問われる中、何より女性研究者の貧困と不安定化が、学術の再生産を危うくしている!という点に警鐘を鳴らしていきたいというシンポです。

敬老の日です。ぜひ多くの方のご参加およびフロアからの積極的なご発言、ご提言を、どうぞよろしくお願いいたします!ありがとうございます。

2<国際ジェンダーの会のさまざまな試み>

二つ目は、国際ジェンダーの会の報告によって、日本でも、PhD論文のAwardや女性研究者の著書へのAwardまた若手女性研究者に対して学会の機関を通じて、論文の書き方、大学就職のKnow How、女性研究者故の問題や悩みへの対処などサポート体制の試みがなされていけばよいのではないか、という情報共有のご提案です。

現在、アメリカに本部のある7000人を超えるメンバーを数える世界国際関係学会(ISA)の副会長(2016-17)を務めており、その中のWomen’s Caucusの執行委員をしております。Women’s Caucus International Studies(WCIS)では、毎年、世界中の女性研究者のPhD論文(英語)、およびジェンダー研究の著書(英語)でその年最高の成果を決定しAwardを授けるシステムを取っており、毎年執行委員は夏に大量の論文・著書を読み、その年最高のPhD論文、ないし著書を書いた女性研究者を選び、賞を与えて優れた研究を称え、奨励しています。また昨年から学会の際に、通常の分科会とは別にTown Hall Meetingを開き、集まった女性の若手研究者に対して、PhD論文の書き方、大学で職を得るために、学会報告の仕方、などを執行委員と有志によりラウンドテーブル形式で共同ディスカッションする場を設けて成功しており、特に若手女性研究者に大変感謝されています。今年は年次大会の2月にワシントン郊外のバルティモアで、その後6月にはISAの香港大会で、同様の会合を開き、評価を得ました。

特に香港ではアジアで国際政治を学ぶ女性PhD研究者に対して、PhD取得後の大学での就職について、アジアの女性国際政治研究者のネットワーク形成について、女性研究者の地位の向上について相互にディスカッションし大変有益でした。帰国してからもメールで相談を受けています。

日本でも、女性研究者に特化したPhD論文や著書のAward,また若手女性研究者の育成のため、問題点を集め解決に向け支援するような体制を、各学会の中で作っていければ、孤立しがちな女性研究者にとって力になるのでは、と思い情報を共有させていただきました。女性研究者、中でも若手研究者は現在でもなかなか正規の職を得るのが困難であり、また任期付きの職が特に若手の間で、准教授さらに教授職にまで広がりつつあります。後人を育成していくという点でも、また、非正規に苦しむ女性研究者が増えているという点でも、JAICOWSもこのような問題にも取り組んでいきたいと思っております。

ぜひ皆様のご協力とご理解をお願いいたします。

皆様どうぞ充実した夏をお過ごしください。

JAICOWS会長 羽場 久美子

女性科学者リレー・インタビュー「リケジョの夢が叶うまで~新しい触媒の発見とカルボン酸の合成」

相馬 芳枝 (国連世界化学年の女性化学賞受賞者)

1、夢の白衣~少女時代、さすらいの心~青春時代

Q、はじめに、先生の少女時代・青春時代についてお話しいただけませんか。

ご出身は関西と伺っていますが・・・?

  • 私は山口県生まれ、神戸大学理学部を卒業して公務員試験に合格し、大阪工業技術試験所(通産省の管轄、現在の産総研)に就職しました。1965年(昭和40年)春のことです。当時は合格するとリスト(名簿)が作成されて、国立の研究所から個別に採用の指名があるというやりかたでした。私は中学生の頃から「白衣」に憧れていたので、白衣を着て実験できる職業に決まって、うれしく誇らしく感じました。

Q、なぜ、白衣が夢だったのですか?

A、父の家は農家をしていました。私は幼い頃から牛の世話や畑仕事に親しんできました。自然や命に興味がありました。物心つくと、野口英世の伝記やシュバイツアー博士のアフリカの話の本を読んで、医者になりたいと(あるいは白衣の天使の看護師になろうと)思いました。

ところが大学受験で医学部に失敗、残念でした。一浪して理学部に進学したのですが、夢が叶わなかった落胆は大きく、入学してからも「迷える子羊」のような状態で、憂鬱な日々を送っていました。

Q、若い時代は、誰でも憂鬱なものです。心はどこか見知らぬ所へ、あてどなくさまよい、自分にも覚えがありますが、「青春とは」そのような迷える子羊の群れを呼ぶのかも知れません。

A、けれども大学二年目に、小林正光教授の化学実験教室に誘われました。はじめはビーカーを洗う作業や、実験に使う白い粉の重さを量るような易しい仕事しかできませんでしたが・・・この研究室は生き生きした活気に溢れていて、同級生7~8人で楽しい実験を重ねることになりました。

当時めずらしい産学協同のプロジェクトを小林教授は動かしていて、エネルギッシュな研究活動を進めておられました。

Q、そんな出会いがあったのですね。「迷える子羊」は、めでたく「研究者の卵」の道へ進むことになったのですね。さて、就職後の研究所(現在の産総研)では、何をなさったのでしょう?

2、化学者として自立をめざし、生涯の目標に出会う

A、当時は公害が日本を席巻する大問題でした。水俣病(チッソによる水銀汚染)、イタイイタイ病、大気汚染(光化学スモッグ、イオウ酸化物質の発生)、海への流出油による被害などが連日のニュースになっていました。大学も研究所もダイレクトに社会の動きを意識しました。

Q、1960年代、1970年代の公害は目を覆うようなことばかりでしたね。被害は深まるばかり、汚染地域は広がる一方でした。汚染地域の人々は寝たきりになったり、死亡したり、障害者になったり、いじめられて村八分にされたり、踏んだり蹴ったりの状況でした。悪い時代です。悲惨な報道写真が人々の心に何かを訴えていました。

高度成長の裏側にあるものが可視化され、顕在化された時代です。

A、まず私に与えられた研究は、「公害対策を研究する分析の仕事」です。公害原因の一つである「一酸化炭素(毒ガスの一種)を吸収、除去」する方法の開発です。分析方法について、より性能の高い「高性能な吸収溶液」を見つけ、開発せよ!というミッションでした。

研究レベルは、プロにとっては中程度の課題です。広く知られているように「一酸化炭素は、自動車の排気ガスにも含まれて」います。文献で調べた方法を追試して、さらに新しい現象を見つけていきます。やがて、予測もしなかった「新しい現象」が目の前に出現しました。運が良いとはこのことでしょうか。そして世界初の「銅カルボニル触媒」の発見につながりました。さらに発見された物質を利用して、「高温高圧でなければ」作成できなかった「三級カルボン酸」を「常温常圧で」「コストをかけずに合成できる方法」へとつなげました。これが生涯を代表する触媒の研究へと進んだのです。(『理科はこんなに面白い』東京図書出版、2014年参照)

これは産業界でも高級塗料の原料や石油化学の会社で利用できるというメリットがあります。すなわち、以前の方法とはケタ違いに「省エネ」で「簡便な」合成方法を開発できたのです。(「銅(I)銀カルボニル触媒によるカルボン酸の合成」『油化学』第30巻第5号参照)第1報から毎年積み重ねて第20報まで研究を進め、さらに30報、40報と発展させていきました。これらは、当初めざしていた公害防止の研究とは枝分かれした高い次元の研究成果となりました。

3、暗いトンネルでも独自の研究課題を続けて進む

Q、その間、研究費、研究に必要な費用は順調についたのでしょうか? 私の場合は競争が職場内部で生じると、上司に研究費を横取りされてまったく使えなかった年もありました。いわゆる「狩りの獲物(標的)」にされてしまったのです。女性の研究費は徒党を組んだ複数の男性にねらわれました。その年は泣く泣く外部の研究費に頼って凌ぎましたが・・・。

A、おっしゃるとおりです。当初の課題を達成し、新しい物質の開発に成功したものの、国立研究所の中では大型研究(ナショナル・プロジェクト)のメンバーにならなければ、職場内で評価されません。暗いトンネルの中にいるような状況が十年も続きました。でも、私は、この研究テーマに惚れ込んでいました。手放すことはありませんでした。百万円ばかりの研究費で実験を継続しました。研究所内では女性差別もひどく、実に苦しい時代を過ごしたものです。女性研究者は孤立しやすく、生き延びることさえ困難な場合もあります。

やむを得ず、途中で道を変えた人、職場そのものを辞めた人もいます。女性にとって厳しい世界です。そういう現実を経験した者として、女性研究者を育て、継続的に成果を出せる研究者を増やすためには、備えなければならない環境の整備があります。

4、猿橋賞を受賞、そしてノーベル・シンポジウムの講演

Q、大変な時代、忍耐の時代に、先生は猿橋賞を受賞されたのですね。

A、1986年、暗いトンネルにいた時代に、生涯のエポック・メイキングともいえる猿橋賞をいただきました。精神的に辛かった40代に、もっとも尊敬する科学者である方から評価されたことは涙がでるほど嬉しいことでした。勤務先での評価は変わりませんでしたが、自覚した(めざめた)研究者としての私は進むべき道(志)を確かめました。

Q、その後、海外で研究発表された業績が認められて、国連の世界化学年「女性化学賞」の受賞(2012年)へつながっていったのですね。

A、主な業績は二つです。「銅、銀カルボニル触媒の発見と第三級カルボン酸の常温常圧合成法の研究」および「地球の温室効果防止のための二酸化炭素再資源化の研究」です。長い間、チームで追いかけてきた努力が実りました。

Q、漏れ聞くところ、ノーベル賞授賞式にも参列されたことがあると伺いましたが・・・。

A、はい、ノーベル委員会から1991年に「二酸化炭素の削減」をテーマに、シンポジウムの講演をしてほしいという手紙がきました。当時、産総研ではすでに大型予算を動かしていたので、タイミングも良かったのです。優秀な部下の研究者もいて、国際共同研究も進めていました。ノーベル・シンポジウムで講演し、授賞式にも出席させていただき、誠に光栄でした。

その後は触媒の研究に立ち返り、部下たちは次々に新しい触媒を発見し発展させました。一連の業績に対して、工業技術院賞(1993年)、科学技術庁長官賞(2000年)、日本化学会学術賞(2002年)が授与されました。このように陽のあたる晩年を過ごした後、2002年に私は定年退職しました。

Q、20年にわたる苦しい中堅研究者の時代を経て、コツコツと実験を積み重ねてきた学問研究の地盤が、「リケジョ」(理科好きの少女のこと)の夢に翼を与えて才能を発揮させたことはすてきです。

A、定年後はアウトリーチ活動を行って「理科好き」の子どもを育て、「女子中高生のための関西科学塾」や「茨木市相馬芳枝科学賞」の創設、そして女性科学者の研究環境を良くするための各種の委員会活動を、一人のボランティアとして続けています。

Q、これからも少女のように、夢を追いかけつづけてください。本日はありがとうございました。

 

(2017年5月28日収録、インタビューは国枝たか子による)

役員の主な著書

国際シンポジウム 「なぜアメリカで女性大統領は誕生しなかったのか? ジェンダーと多様性から考える2016年大統領選挙」

陽射しが明るくなり、春の訪れが感じられる季節になりました。いかがお過ごしでしょうか。
さて、3月18日(土)にお茶ノ水女子大学で開催されます国際シンポジウムのご案内をさせていただきます。間近になりましたが、多数の皆さまにご参加いただければ幸いです。
          記

国際シンポジウム
「なぜアメリカで女性大統領は誕生しなかったのか? ジェンダーと多様性から考える2016年大統領選挙」

日時:2017年3月18日(土)13:30-17:00
会場:お茶の水女子大学共通講義棟1号館304号室

第1部 特別講演

1. メリッサ・デックマン(Washington College)
「トランプ時代におけるジェンダー・ギャップ:2016年大統領選で女性有権者の投票行動から何を学ぶか」
2. ジュリー・ドーラン(Macalester College)
「女性大統領候補:2016年大統領選におけるジェンダーの役割

第2部 ラウンドテーブル:多様性の視点から見たトランプ政策

メリッサ・デックマン (Washington College)
ジュリー・ドーラン (Macalester College)
マリアン・パリー(University of Delaware)
武田 宏子(名古屋大学)
申 *榮(*は王偏に其、お茶の水女子大学)

日英同時通訳あり

参加申込(入場無料):参加申込フォーム 
http://www2.igs.ocha.ac.jp/events/events-2016/2017/02/0318/
主催:お茶の水女子大学 グローバル女性リーダー育成研究機構 ジェンダー研究所、JAWS(日米女性政治学者シンポジウム)
後援:明治大学情報コミュニケーション学部ジェンダーセンター

<趣旨>
昨年11月に行われたアメリカ大統領選挙は、アメリカで初の女性大統領が誕生するのか、またはアメリカ歴史上政治経歴のないもっとも「アウトサイダー」が勝利するのかをめぐって世界の関心を集めた。そのため、選挙キャンペーン中、これまで以上にジェンダー・人種・移民の問題が争点になり、「アメリカ的価値観」をめぐる激しい対立が目立った。就任後のトランプ政権は、選挙公約の実現にむけて「米国第一主義」を隠れみのに、多様性を否定する危うい政策を次々に発表した。トランプは、なぜ、誰に支持されたのか?「歴史上初の女性大統領」の誕生はなぜ失敗したのか?トランプ政権の動きをどのように理解すべきか?
本シンポジウムは、ジェンダー・多様性の視点からアメリカ大統領選挙の結果及び、その後のトランプ政策が持つ社会的影響を理解することを目的に企画された。シンポジウムの第1セッションでは、アメリカ政治学の専門家による基調講演、第2セッションでは、ジェンダーと政治を専門にする研究者を招いて、基調講演者とともにトランプ政策について議論するラウンドテーブルを設ける。アメリカ政治の行方に関心のある研究者に限らず、広く市民の方々からの参加も期待したい。

JAICOWS

JAICOWS設立の趣旨

会長からのメッセージ

役員会・連絡先

入会のご案内

JAICOWS設立の趣旨

 1994526日、日本学術会議 第118回総会において『女性科学研究者の環境改善の緊急性についての提言(声明)』が採択されました。この声明は「科学が人類の将来に大きな影響を及ぼすようになった今日、女性が、科学に対して男性同様に責任を負うべきであると考え、また、負いたいと希望することは当然である。そして、多くの女性が科学研究に参加することによって、科学の一層の発展が期待される。(同声明より抜粋)」という考えのもとに採択されました。JAICOWSは、その認識をさらに深め、女性科学研究者の人権を守り、研究条件、生活保障などをはじめとして、諸条件がよりいっそう改善されることを願い、学術会議会員がおひとり(島田淳子先生)の時代に立ち上げられました。

現在、それから23年を迎え、学術会議会員は210名中50名、連携会員は2000人中420名(2016年末)、JAICOWS会員は120名と、大きく成長しました。

初心を忘れず、また会員、連携会員30%時代を目指すJAICOWSの新たな課題も見据えて、今後も皆さまのために活動してまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

総会開催情報

○総会開催情報

2018年度総会

日 時:2019年1月27日(日)
12:00~12:45 役 員会
13:00~13:45 総 会
14:00~17:00 シンポジウム

会 場:青山学院大学 青山キャンパス 総研ビル 12 階 大会議室

プログラム:
1 緊急!非常勤講師に関するアンケート調査報告 渋谷淳一(東京福祉大学特任講師)
2 非常勤講師組合から、非常勤講師の現状と課題
衣川清子(首都圏大学非常勤講師組合 書記次長、法政大学非常勤講師)
3 性犯罪規定改正後の性被害の状況―性被害救済センターの調査から
宮園久栄(東洋学園大学人間科学部教授)

 

総会関連

■ シンポジウム

日時:2017年1月21日(土)14:00−17:00
「イスラーム女性と国際スポーツ ~ヴェールをめぐる葛藤と共存性」
荒井啓子(学習院女子大学教授)
「若手研究者養成における課題:ジェンダー差別と「しかたない」論理の再生産」
福永真由美(東京大学准教授)
会場:青山学院大学 青山キャンパス 総研ビル 10階 第18会議室
(東京都渋谷区渋谷4-4-25)
http://www.aoyama.ac.jp/outline/campus/access.html

■ 総会関連

日時:2017年1月21日(土) 13:00-13:30
会場:青山学院大学 青山キャンパス 総研ビル 10階 第18会議室http://www.aoyama.ac.jp/outline/campus/access.html

■ お知らせ

日本学術会議法学委員会の「セーフティ・ネットのあり方を考える」分科会によるシンポジウム「アクティベーション改革と福祉国家」が開催されます。詳細はPDFファイルを御覧ください。

過去のお知らせはこちら(シンポジウム 総会 Newsletter 書籍・出版物)

 

○総会開催情報

2015年度の総会を以下の通り開催致しました。

※ 総会の議事内容等については、News Letter No.33 に掲載しております。

 

【総会】

開催日時: 2016年1月9日(土)13:30~14:20

開催場所: 青山学院大学 青山キャンパス 総研ビルディング10階 第17会議室

アクセスマップ: http://www.aoyama.ac.jp/outline/campus/access.html

キャンパスマップ: http://www.aoyama.ac.jp/outline/campus/aoyama.html

 

【公開講演会】

開催日時: 2016年1月9日(土)14:30~17:00

開催場所: 青山学院大学 青山キャンパス 総研ビルディング10階 第17会議室

アクセスマップ: http://www.aoyama.ac.jp/outline/campus/access.html

キャンパスマップ: http://www.aoyama.ac.jp/outline/campus/aoyama.html

 

・「家族と憲法――2015年12月16日最高裁判決をめぐって」

講師: 辻村みよ子先生 (明治大学教授)

・「オランダの女性と就労をめぐる課題」

講師: 廣瀬真理子先生(東海大学教授)

 

会長からのメッセージ

JAICOWS 新会長就任のメッセージ

羽場 久美子
(日本学術会議第19期研連委員・連携会員、20期・21期連携会員、22期・23期第1部会員、青山学院大学教授、世界国際関係学会(ISA)副会長)

皆様

日本学術会議で、女性一人の時期から活躍されてきた多くの先達たち、島田淳子先生、一番ケ瀬康子先生、安川悦子先生、原ひろ子先生、また役員を引き継いでこられた多くの先生方の素晴らしい献身的活動に、深い敬意を表します。そうした先輩たちの文字通り「女性科学研究者の環境改善」の努力を通して、私たちの現在があるという感謝と、その利他的な素晴らしいご尽力を引き継いでいくことの荷の重さに心を引き締めております。

他方で、現在、ジェンダー研究は、グローバル化の社会においても、また日本の政策目標としても、最も重要な課題の一つとなっており、あらゆるジェンダー研究の第一人者の方々が、それぞれ第一線で活躍されておられるために、御忙しすぎてなかなか役員をお引き受けいただけず、私のような若輩者が、不十分ながら任を任されました事、恐縮に存じます。とともに、諸先生方の御教授とご協力を得ながら、学術会議における女性研究者が、会員で23.3%、連携会員で22.3%という時代に、量的に増大したのみならず、如何に質的にも高めていけるのか、どのような環境整備が求められているのかを、あらためて考え直す機会としたいと思います。

歴史

「女性科学研究者の環境改善に関する懇談会JAICOWS」の発足については、JAICOWS設立の趣旨や原前会長のメッセージにも書かれておりますように、日本学術会議第15期に4名の女性会員の下、「女性科学研究者の環境改善の緊急性についての提言(声明)」が採択されたものの、16期には会員が島田淳子先生お一人になり、そうした中で、日本学術会議の「外側で活動するNGO」として、一番ケ瀬康子元会員を第1代会長(16期;1994-1997)として発足した、とあります。その後、第2代安川悦子会長(17期:1997-2000)、島田淳子会長(18期:2000-2003)、原ひろ子会長(19-22期;2003-2015)を中心として積極的な環境改善の活動がなされ、今年2015年1月より羽場久美子(23期:2015- )に引き継がれました。

課題

この10年間で、女性研究者、あるいは女性を取り巻く社会環境は大きく変化しました。これまでの学術会議における女性比率16期0.5% から19期6.2%という状況の中、錚々たる方々の献身的な研究環境改善努力という状況とは大きく異なり、丁度私が入りました19期から20期に掛けて、女性比率は飛躍的に改善し、20期42名:20.0%、21期43名:20.5%、22期49名:23.3%と、大きな転換がありました。23期は49名:23.3%で横ばいです。

旧来の学会からの選出(私は当初国際政治学会から選出されました)に代わって個人選出となり、1)女性、2)地方、3)若手、という努力目標の下、これまでの大都市中心の60-70代の重鎮研究者による学術会議(そして陳情型の会議)から、女性、地方研究者、若手が大幅に拡充され、また小泉内閣の下で、総理府から内閣府に移行されて、政策立案型のより機動的な学術会議へと変化していきました。

他方で、世界における女性の地位向上やジェンダー研究の進展に比べて、内実としての日本の女性の地位(特にエンパワーメント)はなかなか上がらない。2013年10月末のダボス会議を主催する世界経済フォーラム(WEF)に寄れば、「世界136カ国を対象に、男女平等の達成レベルを経済、政治、健康、教育の4分野から評価した「国際男女格差レポート2013」の発表で、日本は2012年から順位を4つ下げ、136カ国中105位」となりました(朝日新聞)。先進国のみならず中堅国途上国と比較しても低いとみなされる日本女性の地位の改善のために何をしていくべきかが問われている時期に来ていると言えます。(原因も様々です。働かずして自宅にいられる主婦願望が日本の上流・中産層の目標であるとか、子育て3歳神話、さらに政治など公の主導権は男性に任せようとする文化など、様々な日本独特の歴史や文化慣習も関係しているのかもしれません)

現在、学術会議の女性会員数は23.3%(49名)と横ばい、連携会員は22,3%(420名)と微増ですが、今期の改選人数の女性比率が高かったため、次回2017年の改選時に今回とほぼ同様の比率で選出すれば、30%を超える可能性もあるとされ、2020年までに3割、という目標はほぼ達成できる可能性が高まっています。

21世紀の女性研究者と女性をめぐる社会状況

他方で、女性会員、連携会員が増えたことが女性の研究状況に繋がっているかと言えば、各大学や研究所などそれぞれの職場において重要な役職についている女性幹部は必ずしも多くありません。また日本の女性の地位がなかなか上がらないことに象徴されるように、国会議員や地方議員など政策決定に関わる部門にも女性は必ずしも多くありません。さらに、アカハラ、パワハラ、セクハラと言われるような様々なハラスメントが、女性に限らず、研究教育機関でも横行している現状があります。

今後は、「男女共同参画」と言う状況の下で、社会のリーダーとなっていく女性たちの地位を保証していくとともに、移民の半分が女性でトラフィッキング(人身売買)など非合法な活動にも引き込まれていること、ワーキング・プアの多くが、若者のみならずシングルマザーに象徴される女性たち、子供の貧困の進行と呼ばれるような、社会の底辺で苦しんでいる女性や子供たちにも光を当て、注意を向けていく必要があると思われます。

課題はますます拡大していますが、23期は、会員23.3%、連携会員22.3%、49+420名の女性たち、および学術会議全体の構成員とも連携しつつ、男女ともに住みよい社会、研究を発展させていける環境を整備すべく、微力ながら努力を重ねたいと思います。

23期の努力目標・達成目標

私自身は、24期には、会長を次の方に引き継ぎ、さらに活性化を図りたいと思っておりますので、その時までの努力目標・達成目標を、次の3点としたいと思います。

1)  JAICOWS会員を現在の90名から、100名以上、可能なら150名を目標とし、できるだけ、現会員・連携会員から積極的に会員になっていただく。その多くの方々が、積極的に関わっていけるような、夢と目標のある活動を目指す。

2)  学術会議の会員、連携会員にアンケートをとり、職場、研究教育活動、生活における困難な事項を出していただく。それらの集計を取り、新しい時代における環境改善のあり方を目指す。

3)  できるだけ、分野ごとに複数名の会員参加を目指し、年2回ほどの研究会を重ねることにより、現在の研究課題と今後の方向性を確認する。現在、分野別委員会ごとに数名-10数名の研究者がいる状況の下では、研究条件改善および研究分野の発展に際しての獲得目標も異なってきていると思われますので、場合によっては、役員の中に、人文社会・自然科学の分野わけに加えて、分野別委員会ごとに一人ずつ程度の会員・連携会員が入ってくることにより、現状の改革目標が把握しやすくなるのではないかと思います。

これらの活動の中で、次期会長になって下さる方を養成し、24期には滞りなく委譲することを目標とします。

会長に就任させていただいての、現状認識と努力目標ですが、以上のような努力・達成目標を掲げて、ぜひ、皆様とともに、皆様の研究教育生活条件改善のために、活動していきたいと存じます。

皆様、

皆様の課題と目標を持ち寄って、ぜひ、日本学術会議、各職場、そして日本の女性環境を改善していくことにお力をお貸しいただきたく、御教授・ご協力・御教導の程、どうぞよろしくお願いいたします。

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